井溝社会保険労務士事務所ブログ

2012年8月31日 金曜日

加重労働による健康障害を発生させた事業場に対する労働局の監督指導結果

先日、東京労働局が管下の18労働基準監督署が平成23年度に実施した、過労死・過労自殺などの「加重労働による健康障害」を発生させた事業場に対する監督指導結果をまとめました。


この調査結果によると、監督指導が実施された54事業場のうち、47事業場(87%)に対しては、何らかの法令違反が認められ是正勧告が行われています。調査結果の概略は下記のとおりです。


監督指導の対象となった54事業場は・・・
いずれも不適切な労働時間管理・健康管理を原因として、過労死や過労自殺など過重労働による健康障害を発生させたとして、労働基準監督署長が労災認定を行った事業場です。
このうち、過労死を発生させた事業場は26、過労自殺を発生させた事業場が8でした。


また、監督指導時に違反率の高かった事項は・・・
①労働基準法の範疇では、労働時間(同法第32条)に関する違反が最も多く、31事業場(違反率57.4%)に法令違反が認められています。
②労働安全衛生法の範疇では、衛生委員会の設置(同法第18条1項)に関する違反が最も多く、7事業場(違反率22.6%)に法令違反が認められています。


さらに、
過重労働による健康被害を受けた労働者(被災労働者)に対する健康管理の状況は・・・
監督指導が実施された54事業場のうち、
①21事業場(38.9%)において、被災労働者に対し、発症前の1年間に健康診断を受診させていませんでした。
②19事業場(35.2%)において、被災労働者が発症した時期に、医師による面接指導等の制度を導入していませんでした。
③健康診断が実施された被災労働者33人のうち、15人について所見が認められた6事業場(40.0%)は、発症前に受診した健康診断で何らかの所見が認められたにもかかわらず、その被災労働者に対し、健康診断の事後措置を講じていませんでした。


なお、監督指導が実施された54事業場のうち、法令違反が認められなかった事業場は7つありました。
しかし、このうち6事業場に対しては、
法令違反とまではいきませんが、労働時間の適正管理・過重労働による健康障害防止等について文書による改善指導が行われています。


いざ実際に、監督指導を受けたり、是正勧告を受けたりという事態になると、その事業場にとっては、内外からの信頼失墜につながる大事です。
つまりは、結果的にそうならないように、日頃から労働諸法令上の取り決めに則って、従業員(管理監督者も含めて)の健康管理を行っていくことは、とても大切なことですね。



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2012年8月30日 木曜日

改正労働契約法について解説します(その3)

先日の改正労働契約法の公布を受けて、その改正内容について、項目ごとに解説していく3回目(最終回)です。


今日は、「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(改正後の第18条)」を取り上げます。

なお、この改正内容の施行日は、公布の日から起算して1年以内の政令で定める日とされていますので、まだ施行待ちの状態です。


【法改正の趣旨】
現代の雇用環境においては、長期間にわたり有期労働契約が反復更新される場合が少なくない一方で、有期契約労働者が潜在的に雇止めに対する不安を持っている状況がみられる。

このため、更新されて一定期間を超えた有期労働契約については、無期労働契約に転換させる仕組み(無期転換ルール)を設けることにより、有期契約労働者の雇用の安定を図るとともに、条文に5年という通算期間を明記することにより、労使間の紛争を防止する狙い。


【改正内容の概略】
「同一の使用者」との間で締結された「2以上」の有期労働契約期間を通算した期間(通算契約期間)が、「5年を超える」有期契約労働者が、使用者に対して、現に締結している契約期間が満了する日までの間に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結したいと「申込み」をしたときには、使用者は、当該申込みを承諾(有期労働契約期間の満了日の翌日から無期契約が成立)したものとみなされます。

ただし、この「5年を超えて」については、原則として、「6か月以上」の空白期間(クーリング期間)が存在するときには、それより前の契約期間は通算しない取り扱いとされました。


【ちょっと一問一答】
1.支店など勤務場所が違う場合の取り扱いはどうなるのか?

「同一の使用者」については、支店などの勤務場所(事業場)単位ではなく、労働契約を締結する際の法律上の主体(法人または個人事業主)を単位として判断されます。
例えば、ある会社のある支店で勤務していた人物が、そこを離職した後、クーリング期間が過ぎずないうちに、同じ会社の別の支店に勤務する(新たに採用される)という場合などが考えられますので、今後は、アルバイトなどの採用時には、「当社の他の支店では働いたことがありませんか?」などと、前職を確認する必要が出てきますね。


2.無期転換申込権を行使した労働者を雇止めするには?

有期契約労働者が無期転換申込権を行使した場合でも、使用者の意向として、現に締結している有期労働契約の満了日をもって契約関係を終了させたい場合というのは考えられます。
しかし、
無期転換申込権が行使された時点で、既に有期契約期間の満了日の翌日から始まる無期労働契約が成立してしまっていますので、この無期労働契約についても、労働基準法と労働契約法の両方の規定に抵触しない形で、解約(解雇)する必要があります。


3.通算契約期間5年を超えて有期労働契約を締結した場合の取り扱いはどうなるのか?

「2以上」の有期労働契約とは、更新が1回以上行われている有期労働契約のことです。
このため、「一発で」5年を超えて有期労働契約を締結した場合には、その5年を超える間に契約更新の機会が1度もありませんので、無期転換申込権は発生しません。


4.無期労働契約への転換時に労働条件を引き下げることは可能か?

無期労働契約への転換は、労働条件のうち、「期間の定めのみ」を変更するものですから、合理的な変更内容で、かつ、「個別の合意」があれば、期間の定め以外の労働条件を変更することも可能です。


5.登録型派遣にも改正労働契約法の適用はあるのか?

現在の労働者派遣制度の考え方でいきますと、適用があります。
派遣労働者の場合は、労働契約締結の主体が派遣元事業主なので、そこで更新される有期労働契約期間について通算されていきます。


6.出向先との関係においても改正労働契約法の適用はあるのか?

これについては、まだ判然としません。
在籍出向の場合と、転籍した場合が考えられますが、厚生労働省などからは、まだ解釈・解説等が示されていないようです。


7.労働者に無期転換申出権の放棄は認められるのか?

現時点では、まだ認められていません。


なお、この改正後の第18条。
「同条の施行の日以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用し、当該施行の日前の日が初日である有期労働契約の契約期間は、同条第1項の通算契約期間には参入しない」、とする経過措置が設けられています。

つまり、実際の運用上、この規定が懸案となる時期は、同条施行から5年を経た日以降に到来する労働契約の満了時ということですね。
もう少し先の話ではあるのですが・・・同条の施行時期が公布日から遅れて設けられる意図は、「規定の趣旨および内容の周知に必要な期間を勘案して」ということなので、有期契約労働者を雇用している事業所は、同条に関係する労働契約書や就業規則の見直しなどの、施行後の運用に対応する準備だけは早めにやっておきましょう。



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2012年8月29日 水曜日

改正労働契約法について解説します(その2)

先日の改正労働契約法の公布を受けて、その改正内容について、項目ごとに解説していく2回目です。


2回目の今日は、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(改正後の第20条)」を取り上げます。

なお、この改正内容の施行日は、公布の日から起算して1年以内の政令で定める日とされていますので、まだ施行待ちの状態です。


【法改正の趣旨】
予てから有期契約労働者については、無期契約労働者と比較して、雇止めの不安があることによって合理的な労働条件の決定が行われにくいことや、処遇に対する不満が多く指摘されていることから、法律上、有期契約労働者の労働条件を設定する際のルールを明確化することにより、有期労働契約者にも適正な労働条件の確保を図る狙い。


【改正内容の概略】
有期契約労働者の労働条件が、「期間の定めがあることにより」無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容(「労働者の業務の内容および当該業務にともなう責任の程度」を指します)、当該職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、有期労働者にとって「不合理と認められるもの」であってはならない、とされました。


【ちょっと一問一答】
1.不合理性が認められる場合の判断基準は何か?

法第20条に列挙されている要素(職務の内容、当該職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情)を考慮しつつ、「期間の定めがあること」そのものを理由とした、不合理な労働条件を禁止する主旨なので、有期契約労働者と無期契約労働者との間に、労働条件の相違があれば直ちに不合理とされる訳ではありません。労働契約の内容となっている一切の待遇について、「個々の労働条件ごとに」判断されます。
ただし、通勤手当、食堂の利用、安全衛生など、契約期間の長短に直接的には関係が無い労働条件について条件を相違させることは、特段の理由がない限り、合理的とは認められません。


2.不合理と判断された部分の解釈はどうなるのか?

法第20条により不合理と判断された労働条件の定めは、「無効」です。
また、無効と判断された部分については、基本的に「無期契約労働者と同じ労働条件」が認められます。


3.紛争になった場合、不合理性の立証責任は誰にあるのか?

法第20条は、民事的効力が認められる規定なので、不合理と判断された労働条件については、不法行為としての損害賠償が認められます。
また、法第20条について民事訴訟が提起された場合、司法上の判断は、有期契約労働者および使用者「双方が主張立証を尽くした結果」が総体としてなされる、とされていますので、有期契約労働者側に一方的に主張立証責任が負わされるという訳ではありません。


それでは、今日はこの辺で。
次回(最終回)は、「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(改正後の第18条)」を取り上げます。どうぞおたのしみに。



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2012年8月28日 火曜日

改正労働契約法について解説します(その1)

先日このブログでもお知らせしましたが、労働契約法が改正され、今月10日に公布、同日から一部改正内容が施行されています。


今回の改正内容は、①有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換、②「雇止め法理」の法定化、③期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止、の3項目でした。

なお、上記②については、公布日付けで施行されており、上記①と③については、公布の日から起算して1年以内の政令で定める日(もう少し先の話です)に施行されます。


厚生労働省から改正内容についての解釈を示した通達が出てはいるのですが、一読しただけではちょっと解りにくい部分があるようですし、いまが旬の法改正ネタでもありますので、改正内容の項目ごとに解説してみたいと思います。


まず、初回の今日は、公布日付けで施行された「有期労働契約の更新等(改正後の第19条、「雇止め法理」の法定化)」を取り上げます。


【法改正の趣旨】
現在、労使間の紛争において有期労働契約の雇止めに関するものが多いことから、判例において確立されている雇止め法理をルール化することにより、紛争を防止する狙い。


【改正内容の概略】
有期労働契約が反復して更新されている状況下において使用者が雇止めをする場合、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない限り、その雇止めは認められません。
この場合、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で、労働者からの契約更新の申込みを承諾(契約更新が成立)したものとみなされます。


【ちょっと一問一答】
1.判例法理と改正法は表現が異なる部分があるが、何か相違があるのか?

相違はありません。下記2つの最高裁判決で確立されている雇止め法理の内容・適用範囲が主旨を変更することなく規定されました。
①東芝柳町工場事件(最1小判昭49.7.22)・・・有期労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねて「あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在」していた場合には、解雇に関する法理を類推すべきであると判示。
②日立メディコ事件(最1小判昭61.12.4)・・・有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、解雇に関する法理を類推されるものと解されると判示。


2.契約期間満了後、相当期間経過した後に契約更新の申込みをした場合、その申込みは有効か?

一応、有効と解釈されています。契約期間の満了後であっても、正当な理由または合理的な理由による申込みの遅滞は許されるようです。


3.不更新条項や契約期間中に更新しないことを通告することにより、契約期間満了時の合理的期待を減じることができるのか?

できません。労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いている場合においては、使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言しても効果はありません。


4.通算契約期間5年以内でも、契約更新に対する合理的期待は認められるのか?

認められます。合理的期待が発生する時期は、特段(5年到達時などと)決められていません。有期労働契約が反復更新されている状況下であれば、労働者の契約更新に対する合理的期待は認められると解されています。


それでは、今日はこの辺で。
次回は、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(改正後の第20条)」を、次々回は、「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(改正後の第18条)を取り上げます。どうぞおたのしみに。



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2012年8月27日 月曜日

平成23年度の個別労働紛争件数の集計結果について

先頃、中央労働委員会が平成23年度の個別労働紛争に関する相談・助言、あっせん件数、および他機関とのあっせん件数等についての比較を集計しました。


この集計結果によると、全国の労働委員会において平成23年度に取り扱った相談・助言件数の累計は、2,287件。
このうち、あっせん終結に至った件数は、406件でした。


また、他機関との比較に関しては、たいへん興味が湧くところですが、集計結果については以下のとおりでした。


①「新規受理件数と前年比増減」の比較
【労働委員会】 393件(前年比1.0%増加)
【都道府県の労政主管部局等】 909件(前年比1.1%減少)
【労働局】 6,510件(前年比1.9%増加)
【労働審判】 3,721件(前年比12.3%増加)

あっせんを行っている労働委員会は、全国で44労委。労政主管部局等のあっせん件数は、労政主管部局があっせんを行っている6都府県の合計。
労働審判の増加が目立ちますね。


②「解決率」の比較
【労働委員会】 57.8%
【都道府県の労政主管部局等】 未集計
【労働局】 40.6%
【労働審判】 79.4%

各機関毎に算出形式が多少違うようですが、やはり労働審判の解決率が高いようですね。


③「処理期間」の比較
【労働委員会】 (1ヶ月以内)52.9% (1ヶ月超2ヶ月以内)37.1% (2ヶ月超)10.0%
【都道府県の労政主管部局等】 未集計
【労働局】 (1ヶ月以内)54.4% (1ヶ月超2ヶ月以内)40.1% (2ヶ月超)5.5%
【労働審判】 (1ヶ月以内)3.3% (1ヶ月超2ヶ月以内)37.2% (2ヶ月超)59.4%

これも各機関毎に集計方式が多少違うようですが、労働委員会・労働局の場合、概ね2ヶ月を待たずに決着していますね。
一方で、やはり労働審判の場合、決着まで時間が掛かる事例がほとんどのようです。



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