井溝社会保険労務士事務所ブログ

2012年7月31日 火曜日

事業所が社会保険の手続きを怠った場合の損害賠償責任について(その1)

先日、所属している社労士会の支部の会合で、ちょっと興味深い話を聞きました。

主に民法に基づいて判断・解決されるべき労使間のもめ事のひとつですが、中小企業においては潜在的にありそうな話に感じられ、興味を引くテーマでしたので、記事として取り上げてみたいと思います。


まず、そのテーマというのが・・・
「もし事業者が、社会保険等の加入手続きを怠った場合、または、賃金から控除した保険料を国に納付しなかった場合、労働者は、その事業者に対して損害賠償請求をなし得るか(事業者には損害賠償責任が生じるか)否か」というものでした。
どうでしょうか、ちょっと興味を持たれた事業主さんもおられるのではないでしょうか。


この場合、請求する側の労働者が債権者、請求される側の事業所が債務者、という立場・関係になります。

損害賠償の請求は、①債務不履行責任があること(民法415条)と、②不法行為責任があること(民法709条)という、2つの側面から行うことができます。

そして、この2つを立証するためには・・・
例えば、履行遅滞による損害賠償請求の場合ですと、
①本来の債務の発生原因事実(本来はこうしないといけない)
②債務の履行が可能であること(払える状態にある)
③履行期を徒過したこと(期限を過ぎてしまった)
④債務者の責めに帰すべき事由に基づくこと(会社の責任でしょう)
⑤履行しないことが違法であること(やらないと違法です)
⑥債務不履行により債権者に侵害が発生したこと、およびその数額(これだけの被害を被った)
という6つの要件を満たす必要があります。

それぞれ法律的な表現でちょっと分りにくいのですが、だいたいの意味はカッコ内のとおりです。このうち、②④⑤については、債務者が主張・立証すべき要件です。


また、「過失相殺」については・・・
債務不履行または不法行為そのもの、または損害の発生や拡大について、債権者に過失があることを基礎付ける事実を、債務者が主張・立証することにより、損害賠償請求額と相殺することができます。上記⑥の「その数額」が、過失割合に則った「相殺」対象となる金額のことです。


さらに、「損害」というものについては・・・
被害者の財産状態に「金銭的に減少の影響を与えたもの」として立証されるものでなければならず、身体の損傷などによって「現在ないし未来に得られたはずの収入が得られないこと」等が損害である、という考え方(差額説)をとるようです。


以上このテーマを考えるのに必要な知識についてざっと書いてみたところですが、切りが良いので今日はここまでにしておきます。
このテーマに関しては明日以降も引き続き、具体的な事例(判例など)を挙げながら深堀りしてみたいと思います。



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2012年7月30日 月曜日

雇用促進税制をご存知ですか

「雇用促進税制」というのは、前年より雇用(従業員数)を増やした事業所に対する「税制優遇制度」のことです。平成23年6月30日の税制改正法の公布にともない、新たに創設されました。


この制度を使うと、平成23年4月1日から「平成26年3月31日まで(※1)」の期間内に始まる事業年度(適用年度)において、雇用者増加数5人以上(中小企業は2人以上)、かつ、前年度末日対比の雇用増加割合10%以上の要件を満たした事業所については、雇用増加数1人当たり20万円(※2)の法人税(または所得税)の税額控除を受けることができます。
(※1)個人事業主の場合、事業年度は平成24年1月1日から「平成26年12月31日まで」です。
(※2)税額控除の額は、当期法人税額の10%(中小企業は20%)が限度です。


この制度の適用を受けるためには、事業所は、①事業年度が開始してから2か月以内に「雇用促進計画」をハローワークに提出して、②その事業年度の終了後2か月以内(個人事業主については3月15日まで)にハローワークから雇用促進計画について「達成状況の確認」を受けます。最後に、③確定申告書にその確認を受けた雇用促進計画の写しを添付して所轄税務署に申告する、という手続きが必要です。


ただし、制度の適用要件として、①適用年度とその前事業年度において事業主都合の離職者がいないこと、②適用年度における給与支給額が比較給与等支給額(※3)以上であること、が必要です。このほかにも、いくつか要件はありますが、この2つを特に見落としがちですから注意してください。
(※3)算式「前事業年度の給与支給額+(前事業年度の給与支給額×雇用増加割合×30%)」で計算します。要は、従業員が増えた分程度は給与額も増えていないとダメですよ、ということですね。

せっかく申告しても税制優遇の対象にならないと困りますので、この制度の適用を受けようとする事業所は、計画策定前または申告前に、適用要件を満たしているか否かだけは十分確認しましょう。


なお、東京労働局によれば、雇用促進税制は雇用創出効果が期待できる良い制度ではあるものの、制度創設から2年目で、まだまだ制度の周知が十分行き届いていない状況にある、のだとか。

このため、従業員を増やすニーズがある事業所には、この制度の存在や適用要件をよく知って、ぜひ積極的に活用していただきたいものです。
当事務所では、複数の税理士さんとのネットワークを活かしますので、雇用促進計画(採用計画)を練るところから所轄税務署への税務申告まで、一括で対応することが可能です。どうぞお気軽にご相談ください。



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2012年7月27日 金曜日

労働協約等実態調査の結果について

先日、厚生労働省が平成23年(同年6月30日現在)の労働協約等実態調査をまとめました。

労働協約というのは、労働組合と使用者(または使用者の団体)との間で結ばれる労働条件などに関する取り決めのうち、労働組合法に則って締結されるもののことです。労働基準法に基づく労使協定などは含みません。


この調査は、労働環境が変化する中での労働協約等の締結状況、締結内容およびその運用等の実態を明らかにすることを目的として、5年ごと(前回は平成18年)に実施されています。
調査の対象は、全国の民営事業所における労働組合員数規模30人以上の単位労働組合(下部組織がない労働組合)で、今回の調査では、4,086労働組合のうち、2,597労働組合から有効回答が得られた(有効回答率63.6%)ようです。


今回の調査結果によると、前回調査したときよりも「正社員以外の労働者(パート労働者、有期契約労働者)に対しても労働協約が適用されるようになった事業所」が増えている点が目立ちました。つまり、パート労働者や有期契約労働者の雇用環境における待遇改善が、ゆっくりながら進んでいるものと捉えてよいと思います。


このほかの調査結果の概略は、以下のとおりでした。

1.労働協約の締結状況
労働組合と使用者(または使用者の団体)との間で「労働協約を締結している」とした労働組合は、91.4%で前回の89.0%から増加。

2.正社員以外の労働者への労働協約の適用状況
①労働協約適用の有無
●「労働協約があり、その全部又は一部がパートタイム労働者に適用される」は、41.9%で前回の33.5%から増加。
●「労働協約があり、その全部又は一部が有期契約労働者に適用される」は、45.0%で前回の42.7%から増加。
②労働協約が適用される事項(今回から新規調査項目で複数回答)
●パートタイム労働者に適用される事項は、高い順に「労働時間・休日・休暇に関する事項」90.4%、「賃金に関する事項」78.6%。
●有期契約労働者に適用される事項は、高い順に「労働時間・休日・休暇に関する事項」93.6%、「賃金に関する事項」79.0%。

3.労働協約等の運営状況
①人事に関する事項のうち、労働組合の関与の程度が大きい事項は、「解雇」45.7%(前回52.7%)、「懲戒処分」43.4%(前回48.8%)。
②組合費のチェックオフが「行われている」労働組合は、91.0%(前回93.5%)、でした。



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2012年7月26日 木曜日

中小企業定年引上げ等奨励金をご存知ですか

中小企業定年引上げ等奨励金というのは、中小企業向け高齢者雇用の助成金のひとつです。

「いつまでも働ける職場つくり」を制度の狙いとしていますので、対象となる中小企業が、従業員のうち希望者全員を対象とした定年引上げ等の制度(65歳まで働ける制度、70歳まで働ける制度など)を導入した場合に、その導入した制度に応じて一定額(20万円〜120万円)が支給されるという助成金です。


【対象となる要件】 次のいずれにも該当する場合が対象となります。

1.雇用保険の適用事業所となっていて、定年引上げ等の制度を実施した日において常用被保険者の数が300人以下の事業所。

2.制度の実施日から起算して1年前の日から当該実施日までの期間に高齢法第8条及び第9条違反がない(つまり、60歳以上の定年を定めていること、同法に基づく高年齢者雇用確保措置義務年齢以上の定年か継続雇用制度を定めていることが就業規則等により確認できる)こと。

3.平成24年4月1日以降、就業規則等により、①65歳以上への定年の引上げ、②希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度の導入、③希望者全員を対象とする65歳以上70歳未満までの継続雇用制度と同時に労使協定に基づく基準該当者を対象とする70歳以上までの継続雇用制度の導入、又は④定年の定めの廃止、のいずれかの制度を導入していること。

4.奨励金の申請日の前日において、1年以上継続して雇用されている60歳以上の常用被保険者が1人以上いること。


【支給額】
下表のとおり、導入した制度に応じて一定額(20万円〜120万円)が支給されます。法改正にともない、平成24年4月1日以降、支給額が一部見直されていますので注意してください。
また、労働時間の多様性を設ける制度(高齢短時間制度)を併せて導入した場合は、これに一定額を加算して支給されます。




ところで、この中小企業定年引上げ等奨励金。
申請に関する相談、申請手続きなどの窓口が、各都道府県にある高齢・障害者雇用支援センター(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)とされています。ハローワーク(職安)経由で申請する他の助成金とは、ちょっと違いますので注意してください。

また、法改正にともない平成24年4月1日以降、希望者全員を対象とした65歳以上70歳未満の継続雇用制度「のみ」を導入した場合の奨励金は、廃止されてしまいました。これにも注意してください。


なお、中小企業定年引上げ等奨励金に関するご質問のほか、中小企業向けの高齢者雇用の助成金に関して分かりにくいところは何でも、お気軽にお問い合わせください。当事務所では、助成金のプロが対応させていただきます。



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2012年7月25日 水曜日

外国人労働者にも住民票が発行されることになりました

法改正(※下記注釈)にともない、平成24年7月9日付けで、外国人登録証明書が廃止されました。
これと同時に、今月以降は、3ヶ月を超えて日本に滞在する外国人については、原則、日本人と同じく住民基本台帳制度の対象となり、住民票が発行されるようになりました。


また、同日付けで、新しい在留管理制度が開始(従来の外国人登録制度は廃止)され、外国人の在留状況を継続的に把握するために、日本国に在留資格をもって「中長期間在留する外国人」については、氏名等の基本的身分事項や在留資格、在留期間が記載され、顔写真が貼付された在留カードが交付されるようになります。


外国人労働者を使用している事業主さん、または人事担当者の方は、今後、社会保険などの事務手続きにおいて、本人を証明する書類として外国人登録証明書に代わって住民票が求められることになりますので注意しましょう。
また、今後、外国人労働者を雇用する際は、在留カードによって本人確認、在留期間などを確認することになります。これにも留意しておきましょう。


(※注釈)「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」と「住民基本台帳法の一部を改正する法律」という改正法が施行されたことにともなう変更です。



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