井溝社会保険労務士事務所ブログ

2012年8月30日 木曜日

改正労働契約法について解説します(その3)

先日の改正労働契約法の公布を受けて、その改正内容について、項目ごとに解説していく3回目(最終回)です。


今日は、「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(改正後の第18条)」を取り上げます。

なお、この改正内容の施行日は、公布の日から起算して1年以内の政令で定める日とされていますので、まだ施行待ちの状態です。


【法改正の趣旨】
現代の雇用環境においては、長期間にわたり有期労働契約が反復更新される場合が少なくない一方で、有期契約労働者が潜在的に雇止めに対する不安を持っている状況がみられる。

このため、更新されて一定期間を超えた有期労働契約については、無期労働契約に転換させる仕組み(無期転換ルール)を設けることにより、有期契約労働者の雇用の安定を図るとともに、条文に5年という通算期間を明記することにより、労使間の紛争を防止する狙い。


【改正内容の概略】
「同一の使用者」との間で締結された「2以上」の有期労働契約期間を通算した期間(通算契約期間)が、「5年を超える」有期契約労働者が、使用者に対して、現に締結している契約期間が満了する日までの間に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結したいと「申込み」をしたときには、使用者は、当該申込みを承諾(有期労働契約期間の満了日の翌日から無期契約が成立)したものとみなされます。

ただし、この「5年を超えて」については、原則として、「6か月以上」の空白期間(クーリング期間)が存在するときには、それより前の契約期間は通算しない取り扱いとされました。


【ちょっと一問一答】
1.支店など勤務場所が違う場合の取り扱いはどうなるのか?

「同一の使用者」については、支店などの勤務場所(事業場)単位ではなく、労働契約を締結する際の法律上の主体(法人または個人事業主)を単位として判断されます。
例えば、ある会社のある支店で勤務していた人物が、そこを離職した後、クーリング期間が過ぎずないうちに、同じ会社の別の支店に勤務する(新たに採用される)という場合などが考えられますので、今後は、アルバイトなどの採用時には、「当社の他の支店では働いたことがありませんか?」などと、前職を確認する必要が出てきますね。


2.無期転換申込権を行使した労働者を雇止めするには?

有期契約労働者が無期転換申込権を行使した場合でも、使用者の意向として、現に締結している有期労働契約の満了日をもって契約関係を終了させたい場合というのは考えられます。
しかし、
無期転換申込権が行使された時点で、既に有期契約期間の満了日の翌日から始まる無期労働契約が成立してしまっていますので、この無期労働契約についても、労働基準法と労働契約法の両方の規定に抵触しない形で、解約(解雇)する必要があります。


3.通算契約期間5年を超えて有期労働契約を締結した場合の取り扱いはどうなるのか?

「2以上」の有期労働契約とは、更新が1回以上行われている有期労働契約のことです。
このため、「一発で」5年を超えて有期労働契約を締結した場合には、その5年を超える間に契約更新の機会が1度もありませんので、無期転換申込権は発生しません。


4.無期労働契約への転換時に労働条件を引き下げることは可能か?

無期労働契約への転換は、労働条件のうち、「期間の定めのみ」を変更するものですから、合理的な変更内容で、かつ、「個別の合意」があれば、期間の定め以外の労働条件を変更することも可能です。


5.登録型派遣にも改正労働契約法の適用はあるのか?

現在の労働者派遣制度の考え方でいきますと、適用があります。
派遣労働者の場合は、労働契約締結の主体が派遣元事業主なので、そこで更新される有期労働契約期間について通算されていきます。


6.出向先との関係においても改正労働契約法の適用はあるのか?

これについては、まだ判然としません。
在籍出向の場合と、転籍した場合が考えられますが、厚生労働省などからは、まだ解釈・解説等が示されていないようです。


7.労働者に無期転換申出権の放棄は認められるのか?

現時点では、まだ認められていません。


なお、この改正後の第18条。
「同条の施行の日以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用し、当該施行の日前の日が初日である有期労働契約の契約期間は、同条第1項の通算契約期間には参入しない」、とする経過措置が設けられています。

つまり、実際の運用上、この規定が懸案となる時期は、同条施行から5年を経た日以降に到来する労働契約の満了時ということですね。
もう少し先の話ではあるのですが・・・同条の施行時期が公布日から遅れて設けられる意図は、「規定の趣旨および内容の周知に必要な期間を勘案して」ということなので、有期契約労働者を雇用している事業所は、同条に関係する労働契約書や就業規則の見直しなどの、施行後の運用に対応する準備だけは早めにやっておきましょう。



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投稿者 井溝社会保険労務士事務所

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