井溝社会保険労務士事務所ブログ

2012年8月 6日 月曜日

事業所が社会保険の手続きを怠った場合の損害賠償責任について(その5)

事業所が社会保険の手続きを怠った場合の損害賠償責任について、事例研究の最終回です。

今日は、事業主が資格取得の「届出を怠った」パターンのうち、雇用保険の事例(事例4)を見ていきましょう。


【事例4の概要】
事業主が雇用保険の加入【手続きをとらなかった】ため、原告が雇用保険の基本手当を【受給できなかった】ことによる損害(基本手当相当分)の賠償等を求めた。・・・という事例。(大阪地判平1.8.22)


【事例4の争点】
・原告の主張する損害と雇用保険の加入手続きをとらなかったこととの因果関係の有無
事業主である被告の本件不履行に【関わらず】、原告は公共職業安定所の長に対し、自己の被保険者資格の得喪に関し【確認の請求を行うことができ】、その確認を受ければ、被告が法定の手続きを行った場合と同額の基本手当を受給することは可能であることから、被告の本件不履行により、原告に基本手当相当額の損害が生じたとの主張は【失当である】。被告の本件不履行・・・と、原告主張の損害とは【因果関係を欠く】べきものであるから、原告の請求はその余の点につき検討するまでもなく【失当である】。


【私的なコメント】
昨日の厚生年金の場合と比較すると、原告・事業所ともに行動パターンは似ていますが、事例4では、原告が負けていますね。
しかも、本人にも落ち度があるので「検討するまでもない」、という結構厳しい判断が下されています。

事業所が届出を怠った場合は、原告(労働者自身)が確認請求をしなかったことを、どのように評価するかがポイントのようですが、事例4では、労働者が確認請求をしなかったことを重くとらえて、手続未了と損害発生との間に因果関係は無い、と判断されています。

厚生年金の場合と何が決定的に違うのかがよくわかりませんが、もしかすると、制度の存在する意義が違うからかもしれませんね。厚生年金は老後・障害時の生活保障ですが、雇用保険は基本的に働ける年代の人の保険なので、「まずは働くことを考えなさい、基本手当をもらう目的で見せかけの求職活動はダメですよ」という意図でしょうか。
この部分については、一応、弁護士先生の見解も「厚生年金の場合と判断に差が生ずる理由がよくわからない」というものでした。ちょっとスッキリしません。


では、このテーマについての事例研究は今日で終了です。
探してみると結構いろいろなパターンがあって面白かったので、また何か良い素材があれば、事例研究に取り組んでみたいと思います。



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ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。

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投稿者 井溝社会保険労務士事務所

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